第13章 事件1

 
 

事件1

夏の暑い間はなはあまり激しい運動をさせれないので近くの川で水遊びがてら、散歩をさせる。ここは川沿いに公園が整備されており、はなを走らせるにはちょうどいい運動場となっていた。

はなの運動場

名古屋市にしてはいつも人もまばらで、ゆっくりはなを放して遊べるいい場所である。

ある日、かかりつけの獣医さんのところではなの健康診断を受けていたとき、はなの筋肉の話になった。そろそろ、はなの体も成犬に近づき運動量の話になった。はなは、幸い食べるものに執着しないので肥満の心配は今のところないが、運動量を確保しないと体が出来上がらない。

はなは毎日散歩はしていない。する日のほうが少ないくらいである。

「運動量は?」

「散歩と自転車で走るときは1時間くらい…」

「でも、この子は全力疾走じゃないでしょ。」

「そんなの無理です。」

はなは走ると本当に速い。そんなものに自転車で引かれたら、鎖骨骨折だ!

どうやってはなを全力疾走させるか。 涼しくなってきたのを見計らって、好きなボール遊びを利用し、ボールを追わせることを考えた。

いつものように川で、最初は近くから、だんだん遠くへ投げて”もってこい”をさせた。

ここでのポイント、はながもうちょっとやりたいと思ったときにやめる。はなは徐々にボール投げを心待ちにするようになる。

 

ある日、川へいつものように出かけた。河原では子供たちが遊んでいた。

「狼がきた!」

「バカ、狼なんているか」

「だって、でかいぜ」

の会話が聞こえて来た。

 

事故を恐れている私は彼らから離れてボール投げをしようと、場所を移動した。 その日は良いことに反対岸でシェパードらしき犬がボール投げの訓練をやっていた。はなは投げられたボールをそのシェパードが取ってくるのを見て、「早く私にも投げてー」請求した。 待たせて、待たせてボール投げ開始、はなは全力疾走をしてボール投げを楽しんだ。

15本ほど遠投をして、はなも疲れて来たので、一休みしていた。彼女は川で足を冷やし、私はその光景を眺めていた。

 

そこへ… 子供たちが遊んでいるボールが飛んで来た。「すみませーん」の一言に私はそのボールを彼らに投げた。

((しまった!!))

私の投げたボールと同じ速さではなが追った。

子供たちの野球の輪の中へ、ボールとはなが投げ込まれた。

「きたーーーーーーーっ!!」

 

逃げ惑う子供たちの中からボールをさっそうと拾って来たはな。ここで怒る訳にはいかないので、取り合えずはなを誉めてボールをもらい、洗って子供たちのところへ持っていった。

(子供たちが怖がっているので、はなと近づけないよう、最大の努力をしたのに、結果的に最悪のことをしてしまう。これが私がトラブルメーカーと呼ばれる由縁である。)

「ごめんね、投げると持って来ちゃうの忘れてた」 と謝っている最中もみ〜んながボールを持っているのではなは大喜びで 「次は誰が投げてくれるのお!!!」とおおはしゃぎであった。

父兄が1人でも見ていたら、警察を呼ばれるとこだった。