第54章 さくらのホームスティ

 
 

 

さくらのホームスティ

さくらは5ヶ月になっていた。さくらの飼い主さんは犬を飼っていたことはあったがマラミュートのようなサイズもなかった犬だったらしい。

家族構成は両親、4年生の男の子2年生の女の子、同じ敷地内におじいちゃんたちが住んでいる。私が子犬たちを渡したかった理想の大家族である。

さくらはさくらたちが生後2週間のころからうちに来て選んで貰った犬である。

お母さんはさくらはかわいくてかわいくて仕方がなかった。

子犬オフの時みんなが外に出て部屋に6週目のさくらとお母さんだけになったことがあった。お母さんは眠りこけているさくらを抱きかかえながら「さくら、さくら」と声をかけていたのが印象的であった。

―――――のだが、これが最初の失敗の始まりになるのは容易に想像できることだろう。

子犬はかわいいのである。子犬たちははなの厳しいしつけに合い、人間に対して甘噛みを一切することなく育てられた。私も母も手は無傷のまま世話をして犬を出してる。しかし、出た8頭中行った先で甘噛みを始めた犬が数頭いた・・・

さくらもそのうちの一頭だ。子犬からの「この人は噛ましてくれる?」の最初の確認で噛ませたらそれから甘噛みスタートとなる。それを止めるのはなかなか難しかった。

2ヶ月、3ヶ月ならなんとか耐えられもするが5ヶ月6ヶ月となると血もにじんでしまう。さくらの暴れブリを聞いて、1週間うちへ戻してもらうことにした。

私がさくらを出したときと大きく違っていたのはさくらは人の上にいた。

さくらが自分からトップを取ろうとしたのではなく「かわいいさくら」を持ち上げていたようだ。

さくらはさくらに効く方法で真剣に怒られてもいなかったようで人も怖くないようだった。さくらは私の上にもいた。

「さてさて・・・」

さくらとはなを庭に入れてサラと優からは隔離した。いろいろなコマンドを繰り返して言ってみるととりあえずは従うがすぐに飽きて無視をし始めた。そこで私はマジ切れをしてみせた。抵抗してくるさくらに抑え込みをするとほぼパニックになりながら抵抗してきた。

さらに私は奇声を発しながら押さえ込んだ。

さくらは人が怖くなかった。

私との何度かの格闘の後、さくらはおとなしく従うようになっていた。はなはその間そばでワンワン言い続けていた。

私がさくらから離れた瞬間はなはさくらに襲い掛かり、庭の隅に追いやられたそして動こうものなら低い唸り声で服従姿勢をとらせ続けた。

私の押さえ込みとはなのガウガウは飼い主さんが見ていたらかわいそうで涙を流したことだろう。

その様子を一部始終見ていたサラ優・・・震え上がり、私がさくらから離れそばに寄ったら2頭ともお腹を見せるように倒れた。ここに「見せしめ」の別の効果があった。

さくらは私を怖い存在と認め、1週間そつなくこなしていた。最初のうちは餌入れに手を入れようとすると唸ったり私に威嚇をするような行為も見えたがその度やられるので2日もしないうちに従順なさくらになっていた。

次の関門としては飼い主さんたちである。

飼い主さんが同じ態度をさくらに取ればさくらは人を見て行動を変え始めるだろう。さくらを送りがてらさくらの庭で押さえつけ方、叱り方を再度やってみせた。餌を持ちながらさくらの小屋の中へ入って一度やった餌を取り上げてみた。

さくらはホームグランドでの出来事で再度私に威嚇をしたので奇声を発して再度切れたふりをした。

ここでも同じなんだよ、ということさくらはすぐに分かったようだった。しばらく続けられたさくらへのしつけは・・・さくらが年を取ってしまってからはつらいものでしかなくなる。

さくらが平和に家族と共に楽しく暮らしていくには必要な試練だった。

その後、飼い主さんとさくらは訓練所に行き、飼い主さんも訓練を受けた。まだまだ危なっかしいががんばっている。半年で私の元に一時的に返してくれ、私の話を聞いてさくらといっしょに訓練所に通った飼い主さんの判断に私は感謝して、さくらの成長をうれしく見守っている。

 

さくらを預かった一週間は・・・39度を越える真夏だった。

暑〜〜〜〜い!!byさくら

 

夕方には息を吹き返した3頭です。

 

ねぇ〜いつ涼しくなるの?by優