こぼお迎えの旅

 
 
 

こぼのお迎えの旅。


こぼの準備が整った。予定よりは1ヶ月遅れ石川ギグと重なってしまったため不参加となる。致し方なし。3ヶ月のこぼに狂犬病の予防注射を受けさせるのと4ヶ月の社会性を身につけ終わったかどうかという時期に飛行機の旅をさせることCarmenは抵抗した。彼女は生後半年まで待つのも希望した。

しかし半年待ってしまうと名古屋は猛暑の中にある、それはこぼにとって地獄である。涼しい気温からなれていくことが名古屋に住むマラミュートの必須条件なのでなんとかお願いした。

このやり取りすら心を痛める。


4月9日(金)

仕事は変わらず忙しく休める状況ではないので最短の時間でアメリカ滞在をすることにした。まる2日間の滞在・・・それは週一の定期便を利用できない、毎日就航している便を利用する。それにこぼを名古屋で検疫を受けさせるために名古屋へ国際線で戻る必要があった。。。いろいろな条件より

名古屋−成田 成田−ロサンゼルス ロサンゼルス−シアトル

この方法になる、乗り継ぎ合わせて20時間弱。長丁場だった。

こぼを迎えるまで私の中は二分されていた。私がこぼを必要としているものと日本へ連れてこない方がいいと思うことと・・・・ぼ〜っと空港の窓から飛行機を見ていた。貨物が積み下ろしされ・・その中の1つに私は ゲージに入って泣いているこぼが見えた。止めた方がいいんじゃないか?こぼは日本で幸せになれるのだろうか?そんな気持ちがいっぱいで飛行機に乗り込んだ。

シアトル、タコマ国際空港へ

待ち合わせの場所にCarmenはやってきた。「車の中にこぼが乗ってるよ」「マジ!」 「(^.^)」


こぼは全身で挨拶をしてくれ私は後部座席で舐めた押された。その瞬間不安な気持ちはぶっ飛び、「絶対にこの犬をあきらめない!私たちはこの犬と一緒に幸せになる!」

Carmenの家に着きしばらく庭でこぼと母(ルナ)と兄弟犬(フーチ)と・・・遊んだ。私が欲しかった安定した性格は彼には十分備わっているようだった。

「こぼと一緒に寝る?」Carmenは聞いてきた。
「もちろん!・・・こぼトイレはいい?」
「おしっこしたくなったらあなたに知らせるから大丈夫よ。」

「おやすみ〜」とこぼと部屋に入るとこぼはベッドに飛び乗りひとしきり愛想を振りまいたらどかっと横になった。こぼは何もさびしがることもなく異国人の私と一緒に寝た。ベッドの足元で横になるこぼを見て・・・なんでこの犬平気なんだ?

次の朝Carmenに聞いてみた。こぼはパピー幼稚園に通い、昼間は多くの日をドッグディケアで過ごし・・・いろいろな経験をすでに積んでいた。彼にはもうCarmenと離れること、母犬と離れること、兄弟と離れること・・・これらの気持ちの処理の仕方すべて完了していた。彼のすべてのことに対する順応性の高さはこの後ず〜っと驚かされることになる。不安なこといやな事さびしいこと・・・この犬に負の気持ちがあると思えないほどすべてに順応していた。

20時間の飛行機に乗せること気持ちが少し楽になる瞬間だった。

 



4月10日(土)

朝早くよりこぼの母LUNAのブリーダーのTwilaのところまで行った。2時間のドライブとなる。無論こぼは車での長時間ドライブも平気。

ペットセミナー(筋肉とそのケア)に出る。内容は半分くらいしか理解できなかったが収穫もある。


そしてこぼとフーチはトレーニングクラスを受ける。興味深い内容だった。犬に何かの体罰を与えずトレーニングする。。。。誰も声を荒げない。ひたすら誉めている。言うことを聞かなくてもできるまでやり続け誉める。それはその後私が検疫所の中でこぼと接して困った部分である。

私は基本的に舐められないギリギリで犬に声を荒げたりはしていないつもりだった。 はなには体罰を行ったがサラ優には何もしていない。声をあ荒げることはある。

こぼが止めて欲しいことができたとき私は対応に困った。どうしたらいい?こぼは「NOッ!」ではなく「NO」で止めた。こぼのこの素質を潰すのはきっと私だろう。

このクラスでCarmenが言っていたこぼの集中力も確認できた。

その後、こぼ移送のためのクレートを購入しにCarmenとTwilaと買い物に出る。途中話に出るのは橇の話であった。「日本でマラミュートで多頭引きをやる人はいない。」の言葉に驚いたTwilaは「今度冬においで、マラミュート10頭引きに乗せてあげるよ。」マラミュート10頭引き・・・・先頭の犬はどこにいるんだろう。妄想の世界に入ってしまう。アイディタロッドに出たマラミュートチームに乗ったマッシャーとも練習をしているらしい・・・しかもそのマッシャーは女の人だ。こぼのような性格の犬が10頭揃えば・・・そりゃ いいわな!


なぜかその晩はすしを食べに行くことになる。「あなたが日本人だから日本食じゃないわよ〜」

私はあの店の餃子よりおいしい餃子を作れる!


4月11日(日)

この週末はイースターのウィークエンドだった。
Carmenの実家でイースターランチに招待され、午後は私がシアトルにいたときにホームスティしていたJimの家でイースターディナーに招待され・・・とおいしい1日だった。
 


「日本のどこに住んでいるの?」
「名古屋・・・TOYOTAがある豊田市の近くです。」
昔はこれで大体通じた。今回は「う〜〜ん」となった。

「(じゃあ、これでどうだ!)イチロータウンです。」
最近はこれでかなり盛り上がることができる・・・そう、マリナーズのシアトルである。



こぼを愛してやまないCarmenの父
 

今回は2日間という短い時間にも関わらずJimはどうしても会いたいと言ってきた。そう、彼はこぼたちが見たいだけだった。彼の新しい家のデッキで近所の人を呼び話をした。ゴージャスな犬たちに全員満足をしたようだった。

 



Jimは日本にいたことがある。そして夏の名古屋と京都を知っている。夕飯を食べながらJimはCarmenにいかに名古屋の夏が暑いかという話を話した。私から聞くよりJimから聞く方が現実身を帯びるらしく超心配になっているようだ。数ヶ月を彼がどう乗り切るか・・・注意深く観察しよう。

帰りの車の中でCarmenといろいろ話しをした。そろそろCarmenの様子がおかしくなってきているのに気がついていた。明日私はこぼをさらい簡単には会えない日本に連れ去る。いろいろな話をした。

Carmenは常に自分に聞いていると言った。「私には犬たちにベストの家を選ぶ責任がある。私はあなたは知っているが日本の何も知らない。行ったこともない、本当の文化もまったく知らない、そんな国に私は犬を出していいんだろうか・・・」自問自答をしていると・・・。

私が感じている私にできることの限界、こぼを見てちゃんとした犬だと感じていること、間違った方向に行かないように 約束すること、私の思いも話した。

Carmenから申し出られていたCo-ownerの話を受けることにした。

現在、多数のアメリカのマラミュートのブリーダーたちは日本人に不信感を抱いている。「日本人に売るな」と激しいバッシングキャンペーンを行っている。

そんな中Carmenも「なぜ日本人に売るんだ!」と言われたこともあったようだ。しかし 彼女は私を信じてこぼを出してくれた。その気持ちに対して私は答えなければならない。Co-ownerにして私とこぼは完全にCarmenのコントロール 下にあることを示す必要があると思い受けることにした。

Carmenは最後の夜こぼとフーチと寝た。


4月12日(月)

朝8時のフライトに6時前に空港に到着した。こぼはクレートの中で落ち着いていた。チェックインを済ませこぼのボディチェックも終了・・・・Carmenはこぼを抱きしめていた。もう号泣で耐えられないところで彼女は去っていった。ここから3回の乗り継ぎにこぼは耐えていくことになる。・・・・が、こぼの性格上本当に何も問題なく彼はフライトを終了して名古屋に着いた。名古屋空港で出てきたときはこぼは尻尾を振り、外に出した瞬間うんこもおしっこもしてきれいなものだった。完璧である。




こぼを見て感じたこと・・・・

私ははなの子犬に関してはできるだけのことをして送り出したつもりである。かなりの自負があった。しかしこぼを見てそれは本場の繁殖作業には足元にも及ばなかったということを思い知らされた。

何が違うんだろう・・・と考えていた。犬を選んで繁殖させれる余裕なんだろう、きっと。性格に問題ある犬を繁殖させない、形の悪い犬を繁殖させない。。。それは当たり前のことだがこの基準がかなりハイレベルにあるのであろう。繁殖をしない選択、これが十分にある余裕に感じる。完全に行き詰まり決まった血統しかいない日本の中でそれを避けることはムリなんだろう。

繁殖をしない選択・・・これははなの繁殖で私に本当にあっただろうか・・・・口ではあったようなことを言っていたが本当にあっただろうか・・・私はうちから出た子犬の仕上がりが100%でない完成度で満足なんだろうか・・・私は こぼたちに何をすべきなんだろう。どうしたらいいんだろう。考えていた。

それはきっとこぼが私たちに教えてくれるんではないか・・・そんな期待を抱いている。


 



こぼ(Gryphon's Moon Over Sea G&H)




父:Titan (Totem Sno Shire's Ice Slick)
母:Luna (Quinault's Gryphon Moon)

ブリーダー&共同オーナー:Carmen Rowe